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時給制ラヴァーズ

第6章 6.雷鳴はまだ遠く

「……なんつーか、これは俺が答えを出したらいけないもんだと思う」
「なにそれ」

 しばらくの沈黙の後、城野は低い探るような声でそんな言い方をした。けど、よく意味がわからない。
 なんで城野が答えを出しちゃいけないんだ? 俺は答えを求めて相談したのに。

「もっと、よく考えた方がいいんじゃないか。ちょっと、その状態じゃ安易なことは言えない」
「なんだよそれー。俺困ってんのに」
「なにを困ってるんだ?」

 神妙な顔で俺を見る城野に、より一層困惑が深まる。だけど城野はなんにも説明してくれないままに質問を重ねてきた。なにをと言われても。

「え? んーっと、これから先どうしたらいいか、とか。こういう関係、やっぱまずいよね、とか」
「はっきりさせたいわけだ」
「はっきりって言うか……どうなのかな、って」
「正直なところ、一度あいつとちゃんと話した方がいいと思う。このままだらだらそういうのを続けるのは、お互い良くないだろうし」
「だよねぇ……」

 まあ、結局のところそうするしかないんだろう。
 慶人の考えは慶人にしかわからないし、俺の答えも俺にしかわからない。そして俺にもわからない。

「どうしてもわからないって言うなら、その気持ちをそのままあいつに喋れよ。なんにせよ、お前がそんな状態なら、俺はその件には口出せない」

 いつでも頼りがいがあって、任せたら大抵のことは解決してくれる城野は、今回そうやって手を引いた。

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