テキストサイズ

時給制ラヴァーズ

第7章 7.ヴァージンペーパー

「……実は最近、少しばかり匂わせてはいる」
「お?」

 そんな俺の急な提案に、慶人は躊躇いがちな呟きで返してきた。

「まだ詳しくは言ってないけれど、それとなく相手がいることは伝えている」
「おお、そうだったんだ。確かに急すぎると変だもんね」

 どうやら俺の知らないところでちゃんと話は進んでいたらしい。そう言われると確かに最近連絡は変わらず来ているみたいだけど、お見合い写真の類は送られて来ていないかも。
 ……そうか。もう言ってたのか。

「同棲してるとか言った?」
「いや、それはまだ。というか、もしここに天がいることがバレたらすぐに飛んでくるだろうからな。タイミングを計らないと」
「飛んでくるって」
「あの二人の行動力を舐めちゃいけない。たとえ海外からだってすぐに来るぞ」
「そんな感じなの?」

 相変わらず慶人のご両親は謎というか凄まじすぎるというか。仕事で忙しくあちこち飛び回っているらしいのが、この場合は幸いなのかもしれない。
 そうじゃなかったら不意打ちの訪問もあり得たかもしれないのか。それは心臓に悪い。

「そうなると、いざ会う時はやっぱり緊張するな。少しでも変なとこがあったらすぐに見破られそう」

 この作戦が上手くいくかは正直わからないけど、俺のミスで失敗する確率は少しでも減らしたい。
 そう思うと、やっぱりもっとちゃんと打ち合わせをして二人揃って面会するようにしないと危ないよな。慶人のいない時に不意打ちで二人に襲来されて、勝負が始まる前に負けるのは勘弁だ。

「天なら大丈夫だと思うけど」

 ただ優しすぎる慶人はそんな風に簡単に太鼓判を押してくれちゃう。この場合、喜ぶべきか甘いと言うべきか微妙だ。
 いや、甘い方か。

「ねえ、慶人。俺のことどう思ってる?」

 だったら、この際もっと距離を縮めようか。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ