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時給制ラヴァーズ

第7章 7.ヴァージンペーパー

「……やっぱりさ、一回ちゃんとご両親と話そうよ。それでダメだったらまた手を考えなくちゃいけないんだから」

 それでも、ずっとこうしてはいられない。そもそもが、最初から期限付きの話だったんだから。
 慶人が、両親の目を結婚から逸らすためだけの恋人のふり。もちろん、その目的が達成されたらこのバイトは終わり。
 それがわかっているからこそ、色々なことを見ないふりしてゆるりとしたこの関係を続けてしまった。

「それはそうだけど、なんで今?」

 のしかかる慶人の困惑はわかる。本当に、なんで今、だと思う。

「だってさ、やっぱりこういうの続けてるの良くないと思うんだ」

 こんな時に止めるのは悪いとは思うんだけど、だからこそ今止めないといけない気がしたんだ。

「なんとなくだらだら続けちゃったけど、おかしいよね、やっぱ」

 だって、セックスだ。男同士で。本当の恋人でもないのに。
 例えばセフレとかお金目的とか、なにかしら割り切ればおかしくないのかもしれないけれど、俺たちはそのどれでもなくて。
 それを誤魔化して無視するには、たぶん色々と進みすぎた。
 城野が言った通り、ちゃんと話し合わないと。

「……そう、だな。もうこんなことやめた方がいいかも」

 この短い間にたくさんのことがありすぎて、恋人のふりをするバイト、っていう名目に無理が出ている。それを、どうにかしなくちゃいけない。
 俺は楽しかったけど、実際は楽しく思っちゃいけないんだろうし、これ以上色んなことを見ないふりをするのは無理だと思うんだ。いつまでも、こんな関係を続けてはいけない。
 慶人もその状態を感じ取っていたらしく、なにかの言葉を飲み込んだ後、大人しく体を起こしてその場に座った。

「じゃあ……」

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