時給制ラヴァーズその後の短編
第2章 まつり浴衣は夏の華
こういう場合は早いところ話を切り替えて状況をリセットするに限る。
だからまずはお祭りを楽しもうと、早足に歩きだした。後ろからくすくす笑いが聞こえてきたけれど、とりあえず無視。
それからは気を取り直し、イカ焼きと焼きトウモロコシを堪能した後、ヒーローのお面を買って、ヨーヨー釣りと射的も楽しんだ。
最初はどっちが多く景品を取れるか対決していたんだけど、どちらも譲らず、最終的に明らかに錘の付けられた小さな招き猫を二人で狙って落として引き分けとなった。
その後やったくじでは俺が可愛らしいキャラクターのついたうちわを、慶人がオモチャの指輪を引き当てた。
銀ピカで、赤くて丸い飾りがついたオモチャの指輪をしばし眺めた慶人は、少し考えるように俺を見つめてから人の少ない場所に移動して。
「天、手出して」
「右? 左?」
「……とりあえず右、かな」
言って出した手を取り、薬指にその指輪を填めてくれる慶人。右手の薬指は「恋人がいます」の印だ。変に左手にされるよりリアルで、やった本人の慶人まで微妙に照れるものだから、冗談で見せびらかすことも出来ず、ただただ二人して照れてしまった。
出来たことといえば、熱くなった顔を戦利品のうちわで扇いで、「焼きそばでも食べに行こうか」なんて若干上擦った声で提案したぐらい。
「今日も暑いね」なんて今さらの会話をぎこちなくしつつ足早にやってきた焼きそばの屋台で、俺たちはその空気を吹き飛ばす、意外で意外じゃない人物と遭遇した。
「あれ?」
「よーいらっしゃい、お二人さん」
威勢のいい声とともに手慣れた様子で焼きそばを焼いていたのは城野だった。ハチマキを粋に巻いて、法被を着た姿はあまりに似合いすぎていて元からそういう職業の人のようだ。
「バイト?」
「いやー人手足んないっつーからさ。急だったし、誰かに声かけるより自分でやっちまった方が早いから……って」
手際よく焼きそばを混ぜ、にこやかに喋りながらパックに同じ分量で盛っていた城野が、俺たちに交互に視線を巡らせ、やにわに表情を険しくした。
慶人とは違う目つきの鋭さは、町中でヤンキーに絡まれた時の怖さと似ている。
だからまずはお祭りを楽しもうと、早足に歩きだした。後ろからくすくす笑いが聞こえてきたけれど、とりあえず無視。
それからは気を取り直し、イカ焼きと焼きトウモロコシを堪能した後、ヒーローのお面を買って、ヨーヨー釣りと射的も楽しんだ。
最初はどっちが多く景品を取れるか対決していたんだけど、どちらも譲らず、最終的に明らかに錘の付けられた小さな招き猫を二人で狙って落として引き分けとなった。
その後やったくじでは俺が可愛らしいキャラクターのついたうちわを、慶人がオモチャの指輪を引き当てた。
銀ピカで、赤くて丸い飾りがついたオモチャの指輪をしばし眺めた慶人は、少し考えるように俺を見つめてから人の少ない場所に移動して。
「天、手出して」
「右? 左?」
「……とりあえず右、かな」
言って出した手を取り、薬指にその指輪を填めてくれる慶人。右手の薬指は「恋人がいます」の印だ。変に左手にされるよりリアルで、やった本人の慶人まで微妙に照れるものだから、冗談で見せびらかすことも出来ず、ただただ二人して照れてしまった。
出来たことといえば、熱くなった顔を戦利品のうちわで扇いで、「焼きそばでも食べに行こうか」なんて若干上擦った声で提案したぐらい。
「今日も暑いね」なんて今さらの会話をぎこちなくしつつ足早にやってきた焼きそばの屋台で、俺たちはその空気を吹き飛ばす、意外で意外じゃない人物と遭遇した。
「あれ?」
「よーいらっしゃい、お二人さん」
威勢のいい声とともに手慣れた様子で焼きそばを焼いていたのは城野だった。ハチマキを粋に巻いて、法被を着た姿はあまりに似合いすぎていて元からそういう職業の人のようだ。
「バイト?」
「いやー人手足んないっつーからさ。急だったし、誰かに声かけるより自分でやっちまった方が早いから……って」
手際よく焼きそばを混ぜ、にこやかに喋りながらパックに同じ分量で盛っていた城野が、俺たちに交互に視線を巡らせ、やにわに表情を険しくした。
慶人とは違う目つきの鋭さは、町中でヤンキーに絡まれた時の怖さと似ている。