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時給制ラヴァーズその後の短編

第2章 まつり浴衣は夏の華

「な、なに?」
「……なんか、それとなくペアルックじゃねーか? お前ら」
「そう見える?」
「あ、ちげぇ。帯だけ揃ってやがる。えっろ」
「いやエロくはないでしょ。たまたまだって。それより焼きそば二つ」

 浴衣を着た時に思ったことをそのまま指摘されて、少し恥ずかしくなって話を流した。
 ある意味話の発端である城野には簡潔に事の顛末を話してあるけれど、こうやって改めて揃いの二人として見られると気まずいというかむずがゆくて逃げたくなってしまう。
 だから目当ての焼きそばを買って早々に立ち去ろうとしたんだけど、城野は歯をきらめかせとてつもなくいい笑顔を作ると指を一本立てて見せてきた。

「よっしゃ、友情価格で一人千円だ」
「なんで!?」
「今までの相談料払いたくねぇって?」
「う、ぐ、それは……」

 いきなり跳ね上がった焼きそば代には異議を申し立てたいけれど、そういう言い方をされると安いくらいなんじゃないかと思ってしまう。
 俺が慶人との関係に悩んでいた時に、流さないでちゃんと向かい合えとアドバイスをくれただけじゃなく、そもそも俺と慶人を引き合わせてくれた恩があるから、むしろ安い相談料じゃないかって。

 どうやら慶人も同じようなことを思ったらしく、おもむろに財布を出そうとしていたから、俺も右へならえをしようと思ったんだけど。

「嘘だよばーか。持ってけドロボー。食らえ山盛り紅ショウガ」

 どさどさっと溢れるほど紅ショウガを乗せられた山盛りの焼きそばのパックを二つ押しつけられ、しっしっと手で追い払われた。しかも次のお客さんをにこやかに接客し始めちゃったから、お金を渡す暇もなく。
 仕方なく離れたところから「ありがとー!」とお礼を言えば、ヘラを持った片手を上げて応えられた。なんという男前。

「今度改めて……って、なあ、天、これ」

 今お金を渡そうとしても受け取ってくれないだろうから、また別の機会に、とやっぱり同じように思ったらしい慶人が不自然な形に言葉を止めたから、つられてその視線を追う。

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