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時給制ラヴァーズその後の短編

第2章 まつり浴衣は夏の華

「おおっ」

 焼きそばの上に山ほど乗せられた紅ショウガ。嫌がらせでやられたのかと思ったけど、よく見たらハート型になっている。

「うわー祝福された! これと一緒に二人で写真撮って城野に送ろ!」
「嫌がられないか、それ?」
「あはは、嫌がられるだろうねー」

 まさかのサプライズにテンションが上がって、スマホを構えたら慶人に冷静につっこまれた。でも結局二人で焼きそばを掲げてお礼の自撮り。
 男同士で付き合うことになったという、本来なら引かれてもおかしくないことを報告して、今までと態度が変わらないどころかこうやって祝ってくれるありがたい友達。

 その相手に向けてこれはお礼になるのかどうかはわからないけど、喜んでいるのは伝わるだろうから後でお礼の言葉とともに写真を送っておこう。

「あのー、それってどこでやってくれるんですか?」

 そんな写真を撮り終えた瞬間、浴衣の女の子たちに声をかけられた。どうやらハートの紅ショウガが目を引いたらしい。
 そこの屋台で、とそのままを答えれば、女の子たちは嬉しそうに焼きそばの屋台に向かった。そしてそこで頼んだものがいつの間にか周りに広がって、あっという間にハートを求める列が出来始めた。

「……なんか、すごい列になっちゃったね」

 確かに焼きそばにハートマークなんてお祭りらしいし写真映えしそうだけど。
 忙しくなって良かったのか悪かったのかはわからないけれど、とりあえず売り上げが上がったことで良しとしてもらおう。
 そんなこんなで二人で山盛りの焼きそばを美味しくいただき、しっかり食欲を満たした。ソースが焦げた匂いって、立派な味の一つだよなぁとしみじみ思う。

「はあー満腹。デザートなんにしよ」
「満腹って言った後にすぐデザートって」

 お腹をさすりながらの俺の言葉のなにがそんなに面白いのか、慶人がなんとも楽しそうにくすくす笑いを漏らす。
 今日の慶人はなんだかとても機嫌がいい。いつにも増して笑顔が多い気がする。
 お祭りが好きなのか、浴衣が好きなのか。まあ、楽しんでいるならなんでもいいか。
 勝手にそう納得して、締めくくりのデザートを探して歩き出す。
 お腹はいっぱいでも祭りの雰囲気でいくらでも食べられそうになるから不思議だ。
 さてなににしよう。やっぱり甘いものがいいよな。

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