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時給制ラヴァーズその後の短編

第1章 短冊に想いを込めて

「だって短冊に書く願い事って、どんなことが上達したいか書くって書いてあるから、なんかエロい意味かと思った」

 書く時は気づかなかったけれど、笹のもとには七夕の由来だったり短冊の書き方だったり、おすすめの料理といったちょっとした情報が可愛く飾られている。
 そんな中に書かれたルール通り書くのなら、「喜ばせる」というのはなんの技術を上達させたいのか、という話になる。

『…………それは初耳なんだが』

 もちろん俺同様そんな書き方は知らなかったらしい慶人が低い声で唸るように返してきて、予想通りの反応に笑ってしまった。だから慶人をいじるのは楽しい。

「まあ慶人はむっつりだからこんなとこには堂々と書かないよね」
『お前の中の俺のイメージはずっとそこで止まってるんだな?』
「あ、そういえば今日ってそうめん食べるといいんだって。書いてある」

 別に本気でつっこみたいわけではないし、あまりいじりすぎると痛い目を見るのは確実に俺の方だから、その話題も程々にして話を変えた。
 今日のおすすめの料理として、そうめんの山とめんつゆが置かれた特設コーナーができている。そこには色のついた星型のかまぼこや飾るための笹の葉まで置かれていて、至れり尽くせりといった感じだ。

『それは知ってる。だから買ってきてある』
「あ、そうなの? じゃあこの星型のかまぼこだけ買って帰ろうかな」
『……それもある』

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