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キス魔は浴衣で燃える

第2章 2.到着

「喜んでくれて良かった」
「こんなの誰だって喜ぶよ! 温泉ついてるよ!?」

 そう。部屋に入って最初に目に飛び込んできたのは、一番奥にある露天風呂。
 普通なら窓になっている部分がガラスの仕切りになっていて、その奥に見事な景色と露天風呂が見えているんだ。こんなの驚きも喜びもしない方が無理ってもの。

「言ったろ。いい部屋取るって」

 そんな俺を満足げに抱きしめて、慶人はそんな風に耳元に囁いてきた。低めた声のかっこよさと言われたことの意味に、二種類の震えが同時に来た。
 言った。ほとんど脅迫のような勢いで言われた。そして実際来てみたら、思った以上にいい部屋で。

「……俺どんだけご奉仕したらいいんだろ」
「そりゃもうしたいだけたっぷり」

 甘くいい声で囁かれたそれにどう反応していいやら、とりあえずここで唇にキスしてしまうとこの腕の中から抜け出せなくなりそうだ。
 だから軌道を変えてほっぺたに軽いキスを送ると、体を離して笑顔を作った。

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