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キス魔は浴衣で燃える

第2章 2.到着

「ご両親に感謝しなくちゃね」
「なんで」
「だってそのおかげで俺たち会えたんだし」

 そもそも俺が慶人と出会ったきっかけは、慶人のご両親からの「結婚しろ攻撃」から逃げるため。
 それで追い詰められた慶人が両親を諦めさせるために男の恋人役を求め、お金と住居につられた俺がそこに食いついたのが始まり。
 つまり俺たちが今ここでこうしているのは、事の発端である慶人のご両親のおかげと言えると思うんだ。
 もちろんその攻撃を受け続けてうんざりした結果が妙なバイトを依頼した訳だった慶人は、あまりその意見には賛成出来ないようで微妙な顔をしている。それでも表立って反論する気もないようで、代わりに繋いでいるのとは反対の手で俺の頬を撫でてきた。

「そういう見方が出来るお前が好きだよ」

 クールな見た目と性格のくせして、甘いセリフを簡単に口に出来る慶人は天性のたらしかなにかなのか。
 そしてまんまとそれにたらされちゃう俺は、頬に添えられた手に自分の手を重ねて、近づいてきた唇に目を閉じて。

「……天、外行こう」

 その唇が触れようとした瞬間、ざばっと立ち上がる音がして手を引っ張られた。突然でなんだかわからないまま外に出て露天風呂へと誘導される。
 どうやら誰かが入って来る気配があったから、それに気づいて場所を移動したみたいだ。

 そうやって手を引っ張られて歩いている間、慶人の背中についた傷をマジマジと見て、申し訳なく思ってしまった。そこまでひどいものではないけど、それなりに筋肉のついている背中に急にそこだけ傷があると痛々しくて。

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