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キス魔は浴衣で燃える

第2章 2.到着

「ごめんね、背中。全然気づいてなかった」

 改めて海が見渡せる景色のいい露天風呂に浸かり、ほっと息をついてから隣の慶人に肩をぶつけてみる。
 なし崩しで始まったことだから、お互いにまだ必死なところがあって、いざとなると全然意識がついていかないんだ。
 だから正直自分がその時にどうしてるか、未だによくわかっていない。だからこそ後からこうやって気づくと意外なことがいっぱいで恥ずかしかったりして。

「それを言ったら、俺もマークつけちゃったし」

 そして俺と同じで、実際ついているそれを見て恥ずかしくなっちゃったらしい慶人が気まずげに俺の体の跡を指さす。
 点々とついた跡は結構色んなところについていて、しかも実はそれは初めてじゃなくて。

「慶人って、結構キス魔だよね。跡もつけたがるし」
「ていうかまあ、マーキングみたいなもん、かな」
「マーキング? あはは、俺にそんなのしなくても誰も取ってかないよ。むしろ、だったら俺が慶人に印つけなきゃ。この前も告白されてたって、城野に聞いたよ?」
「あいつ、余計なことを……」

 俺から見ても、というか普通に見て慶人はわかりやすいイケメンで、それだけじゃなくモテ要素は溢れるほど。少しとっつきづらいクールな見た目だけど、お高くとまるわけでもなく男友達も多いし付き合いもいいし、逆にモテない要素がない。
 その場に出くわしたことは一度しかないけれど、軽いものから重いものまで、告白されるのはしょっちゅうらしい。だから誰かに取られる心配をするなら俺の方でしょ、と笑ったら、慶人は妙に優雅に微笑んだ。

「俺は平気。お前以外見えてないから」
「お、っと」

 そして、当然のことのようにそんなことを……。

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