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キス魔は浴衣で燃える

第2章 2.到着

 籐の長イスにぱったり倒れ込んで、色々言いたい文句を頭の中で回らせながら行儀悪く足をぱたぱたさせていたら、やっと慶人が出てきた。
 そして寝転がっている俺を見てぎょっとした顔をして、それからそそくさと浴衣を着込み出す。

 なんだろう。行儀の悪さに引いた? それともなんか見えちゃいけない場所に跡でもあったんだろうか。
 とりあえず体を起こして着替える様をぼーっと見ていたら、その慶人が自分の着替えと俺の着替えを抱えて俺のもとにやってきた。

「天、部屋に帰ろう」
「え、でもなんか飲み物とかゲームコーナー……」
「いいから」

 手首を掴む手に痛いくらい力が入っている。
 温泉に入る前には、風呂上りにはやっぱり腰に手を当てて牛乳を飲もうとか、昔懐かしのマッサージ機を試してみようとか色々言っていたのに。

「どうしたの?」

 何度聞いても「いいから」としか言わない慶人はいやに強引で、ふらつこうとしていたどこにも寄らずに一直線に部屋へと帰る。エレベーターを降りて部屋までの道はほとんど駆け出しているような速さだった。

「ね、どうしたの慶人。お腹でも痛い?」

 鍵を開けるのももどかしく部屋に飛び込む慶人の後に続いて部屋に入る。履いてきたスリッパも揃えることもなく雑に投げ出されている。
 一体どうしたんだろうと心配する俺を畳の上に座らせ、荷物をその場に放った慶人はそのまま俺の肩を掴んできた。

「ん、んんっ?」

 その上で、急に噛みつくようなキスをしてきた。しかも最初から舌を絡めるような濃厚なキスで、驚いて肩を押そうとした手ごと抱き締められる。
 そしてその唇が首筋に移ってきたのと同時に、片方の手が浴衣を割り入ってきた。

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