テキストサイズ

キス魔は浴衣で燃える

第2章 2.到着

 でも慶人には大事なことだったようで、肘をついて上半身を起こすと、眉間にしわを寄せてイラだった表情を見せた。

「こんな風に急にムラッとするのとか、今までありえなかったんだよ! まったく説得力ないだろうけど」

 自分でも真実味がないのはわかっているらしく、付け足された言葉に勢いはない。そして恐い顔から移行した拗ね顔は、ちょっと可愛いかった。

「それなのに天を見てると色々したくなっちゃってこんな真似……お前が悪い」

 口を尖らせぼそぼそとした物言いで文句をつける慶人は可愛らしいなぁと見下ろしていた俺にまさかの責任転嫁。断言するように睨みつけられて、勢いに負けてしりもちをついた。
 慶人がエロくなるのは俺のせいって。なんて責任の押しつけ方だ。

「えええ、俺別にフェロモンとか出してないんですけど。そんなこと言われたことないし」
「いや、出してる。俺に向けて色気がだだ漏れてる」
「……やっぱり追い詰められすぎてちょっとおかしくなってんじゃないの、慶人」

 起き上がった慶人がじりじりと這うように俺に近づいてくるから、なんとなく距離を取るように後ろに下がる。だけど背中はすぐに壁について、簡単に追い詰められてしまった。

「こんなに好きにさせるお前が悪い」

 そしてとどめの一言。いや、その場に俺を留めさせたのは伸び上がるようにされたキスだけど。
 責められたと思ったら口説かれた。イケメンの技は変化球すぎてバットを振ることさえ出来ない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ