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キス魔は浴衣で燃える

第4章 4.ふたり

「わかった。俺先上がってる。お前はちゃんと体拭いて浴衣着て出てこいよ」

 そして次の瞬間、急に我に返ったように目を開けた慶人がざばっと風呂から立ち上がった。そしてお湯をかき分け湯船から上がると雑に体を拭きつつ重要だとばかりに『浴衣』を強調する。

「え、いいよ。どうせ脱ぐんだし」

 大浴場じゃないんだし、すぐそこに部屋がある。いちいち浴衣を着なくてもいいと思うんだけど。

「ダメ。浴衣は絶対。……ほら、風邪引いたら困るし」

 そこだけはかなり強い口調で言い置く慶人の目はとても真剣だ。そのくせ付け足された言葉はどうにも適当で。
 どうやら慶人は俺の浴衣姿がだいぶお気に入りらしい。むしろここまで推されるとそれはもはやフェチの域じゃないかと思う。

「……むっつり」
「なんでだよ。お前に関しては結構オープンだろ」
「む。確かに」

 ぼそりと呟いた言葉をしっかり聞き取った慶人の反論は、どこか吹っ切れたような物言いで、納得して頷いてしまった。
 確かに今回の旅だけでもだいぶオープンにエロいことを訴えられたけど。
 そこを妙に男らしく言い切られると、そうでしたとしか言いようがない。むっつりと言うには隠れてないもんな。

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