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キス魔は浴衣で燃える

第5章 5.朝

「……慶人、気にしてたんだ」
「するだろ、そりゃ」

 だから立ってる時にキスしたくない、なんて拗ねたように口を尖らせられたら、愛しさはバカみたいに溢れ出てくる。
 完璧で隙がないと思ってた慶人が、そんなこと気にしてたなんて。

「慶人、ちょーかわいい」
「うるせぇ、可愛いのはお前だろ」

 思わず慶人をぎゅっと抱き締めると、腕の中で毒づくように褒められた。
 今まではなんとも思わなかった『可愛い』という言葉だけど、慶人の口から出るだけでなんでこうもくすぐったいんだろうか。
 俺が可愛いと洩らすたびに、「天の方が可愛い」「絶対お前の方が可愛い」「どう考えてもお前が勝ち」「可愛いはお前のための言葉」とムキになって言い返す慶人が可愛くて、言い合いをしていたらしまいには面白くなって二人して笑い転げてしまった。
 朝からなにやってるんだろう、俺たち。

「で、これからどうする? もう少し寝る? それとも朝風呂する?」
「そうだな。……せっかくだから風呂入ろ。昨日は全然堪能出来なかったし」

 目の端に溜まった笑いによる涙を拭って聞けば、腕を組んで少し考え込んだ慶人がそんな風に告げた。
 そうだった。昨日はほとんど浸からないで出てしまったんだった。それならせっかくの露天風呂で贅沢な朝風呂を楽しもうじゃないか。

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