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キス魔は浴衣で燃える

第1章 1.お誘い

「じゃあその分ご奉仕しなきゃね」
「え」

 旅行代は慶人持ちだと言うのなら、他のところで俺が頑張ればいいんだ。気持ちの分、体で返そうじゃないか。

「荷物持ったり、置いてあるお菓子も慶人にあげるし、背中流したり、布団、は敷いてもらえるだろうか俺は手出せないけど、あと俺に出来ることと言ったら……」

 なにが出来るかなぁと羅列している間に、慶人のびっくり顔がなんだか悲しい方面へ歪んでいく。同時に目線も逸らされていくから、なんだろうかその表情の変移はと少しだけ考えて、そして思いついた。 

「あ、もしかしてエロいこと考えてた?」
「……お前がご奉仕とか言うから」

 そうか。この場合の『ご奉仕』と言ったらエロ方面が期待されるのか。
 男同士という関係に未だ慣れておらず、重ねて普段はクールな態度の慶人が俺に対してそういうことを思うというのをまだちゃんと実感出来ていない俺は、こういう時に外してしまう癖があるらしい。

 とはいえ、やっぱりこのかっこいい顔でエロいことを考える慶人も慶人だと思うんだ。そういうことを考えているなら、少しはだらしない顔をするべきだと思う。
 涼しい顔して俺相手にエロいこと考えてるんだもんなぁ。わかりにくいっての。

「ふふふ、慶人はむっつりだなぁ」
「今のは完全にお前のせいだろ」
「お、責任転嫁しちゃいます?」
「違う。それが真実。それに、むっつりはお前の方だって何度言ったらわかるんだ?」
「ん? あ、ちょっと、たんまたんまっ」

 恐い顔でじりじりと迫ってくる慶人に危険を覚えて、手を突き出して距離を取る。けれどその手を取られてそのまま押し倒された。
 その上両手をソファーに押しつけられ、のしかかられて。
 やばい。これは俺にとって、かなりまずい展開だ。

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