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キス魔は浴衣で燃える

第1章 1.お誘い

「エロいことなんかこれっぽっちも考えてないですって顔して、ひたすら俺のこと煽ってんのは誰だよ」
「だからそれはわざとじゃなくて」
「昨日の夜、俺に焦らされて、泣いてねだったのは?」
「……誰だったかなー」

 牙でも生えそうな勢いで迫ってくる慶人の顔は慣れていてもやっぱり恐くて、でもそれがかっこいいんだからどうしようもない。
 しかもその顔で言われたくない夜の話を持ち出してくるもんだから、俺に出来るのはそっと目線を逸らすことくらい。

 昨日のことは昨日のこと。
 ぜひともそう割り切ってもらいたかったんだけど、残念ながら慶人にその気はなさそうで。
 それどころか、今その顔に浮かぶのは「いじめっこ」なんて可愛く呼べない微笑み。音にするならば、絶対「にぃ」だ。

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