慕情
第50章 神仏の領域
【神仏の領域】
月詠は【神仏の領域】に
足を一歩踏み入れると瞬時に薄紫の衣から
純白の衣に身を包み…
目の前に佇む薄雲のような霧に包まれた
神仏の宮殿へと向かった…
「うわぁ…見事な造りの宮殿だ…
水晶玉越しから見るのとは違うな…」
月詠は幼少期の頃から紫仙の仙器でもある
水晶玉で両親のいる宮殿を眺めては外の世界
に憧れていたのだ…
「ふぅ…やっと母上に逢える…緊張するなぁ」
月詠の鼓動は速まり、それに相まって
歩く早さも早くなる…ところが…
「おい、そこの、お前ッ!!見ない顔だな…」
月詠は声のする方を見渡すが誰も居ない…
「おい、何処を見ているッ!!
あたいを馬鹿にしているのかッ!?」
気配は感じるのだが…やはり誰も居ない…