慕情
第55章 悩んだ末に…
「笑わせるな…訳ありの妖魔の子など…」
と、紫仙は最後まで言わず…続けて…
「フンッ!!勝手にしろッ!!
啖呵を切って旅に出たかと思ったら、
すぐに戻ってくるとは情けない…」
さらに畳み掛けるように…
「その妖魔の幼子に名まで付けやがって…
とりあえず…汚れてるではないか…
飯の前に湯浴みをしてこいッ!!」
紫仙は、そう言うと…衣を翻し…
姿を消してしまった…
「…あ、あの…僕…」
朧は大粒の涙を流しながら…
「朧…紫仙様は私の育ての親だよ…
大丈夫だから泣かないで…」
月詠は裾で朧の涙を拭ってあげた…
「実は私も
半分だけ妖魔の血が流れてるんだよ…
紫仙様は悪気があって、
そんな事を言う御方ではないよ…」
月詠は安心させるように、そう言った…