偉大な魔道士様に騙されて体を捧げることになりました
第2章 魔力の回復方法
「…無理な提案をして申し訳なかったね、部屋に戻って休むといい」
「いいえ、魔道士様…」
部屋まで送ろう、と立ち上がった魔道士の方へ向き直った私はまつ毛を伏せて言った。
「私でよろしければ…お手伝いさせて頂きます」
夫でもなく婚約者でもない人に純潔を捧げるということは、今後自分は傷ものとなり貴族令嬢としての誇りは愚か公爵家の名にまで泥を塗ることになる。
それでも、なにより家族が大切だった。
家族が助かるのならばその対価がなんであろうと支払う覚悟でここまで来たのだ。
「…その覚悟に僕も役目は必ず果たすと約束しよう」
魔道士は柔らかく微笑むと広々とした部屋の中心にあるベットへと促した。
ぽすん、と音を立てて腰がシーツに沈み込む。
その隣に着席した魔道士は私の頬に大きく綺麗な指を添える。
端正な顔立ちが私の前で妖艶な表情を見せた。
「魔道士様っ…あの」
「ん?あぁ、大丈夫。例え契約上の交わりだとしても自分本位なことはしない」
純潔を散らすことへの恐怖心を悟られたのか優しく桃色の髪を撫でられる。
「それともう一つお願いがあるんだ」
「…っ、なんでしょうか?」
髪を撫でていた手が耳、頬、口とそこにある事を確かめるように動いていく。
くすぐったい様な恥ずかしいようなそんな感覚に肩を揺らした。
「僕の名前を呼んで欲しい」
魔道士様の高貴な名前を恋人でもない自分が呼んでいいのだろうか、と迷う。
しかし、本人が要求するのなら
「…シヴァリエ、様」
これでよろしいのでしょうか、と頬を染める私にシヴァリエ様はとても満足そうに微笑んだかと思った瞬間
大きな影が重なり、同時に背中がふかふかのシーツに沈みこんだ。