偉大な魔道士様に騙されて体を捧げることになりました
第2章 魔力の回復方法
「本当に…ありがとうございますっ、私にできることならなんでも仰ってください。精一杯努めさせて頂きます…!」
ただの公爵令嬢である自分に何ができるのか、検討もつかないが私は家族が助かるのだという希望に胸が軽くなった。
(これでみんな助かるのね…よかった )
魔道士は力強く言う私にありがとう、と笑いかけた。
「それじゃはじめようか、よろしくね。ステラ・シューベリル公爵令嬢」
「…はい、こちらこそよろしくお願い致します…!」
艶やかな声色で名前を呼ばれ、返事を返す。
一瞬、魔道士の瞳の色が濃くなったように見えたのは気のせいだろうか。
「そうだ、もう1つ僕の秘密を教えてあげよう」
にこり、と微笑む魔道士に首を傾げる
「ーーー…魔道士に名前を呼ばれても決して返事をしてはいけないよ」
「…?ですが、いま」
「それと言い忘れていたけれど、魔力を回復するのに必要な条件は…
“淑女の純潔”だ」
状況にそぐわない単語が聞こえた。
(今…なんと?)
体の強ばりを感じる。
今、聞こえてきた言葉は何だったのだうか。
聞き間違い、かもしくは
「ま、魔道士様…またご冗談を」
冗談、にしてはタイミングがとても悪質だと思うも
笑顔を崩さないままの沈黙から冗談ではないということが嫌でも読み取れる。
さぁ、と全身から血の気が引いた。
まさかの事態に席を立つ
「あ…あの、失礼致します…」
「こんな要求だし引き止めはしないけれど、ご家族のことはいいのかい…?」
扉に向かっていた足が静止した。
貴族令嬢が婚前交渉だなんて許されるはずがない。
…しかし、幼い頃から病弱で令嬢としての立場もろくに務めることのできなかった私を冷遇することなく愛してくれた両親も
私の分まで自分が勤めを果たす、と必要以上に努力してくれた姉も
なにより大切であることは明白だった。