偉大な魔道士様に騙されて体を捧げることになりました
第5章 純愛という名の狂気
シューベリル公爵家おかかえの医者にも根回しをして、ステラが僕の元へ来るよう仕向けたが、まさか本当に来るだなんて。
僕が愛した彼女は御心までも女神のように美しかった。
「ステラ…」
君は僕のことを心の底から嫌悪するだろう。
それでもいい、例え君の心が手に入らなくとも
僕は君のいない人生の方が耐えられない。
明日、公爵家には縁談を申し込むつもりだ。
国内唯一の魔道士であり、なにより命の恩人である僕を無下には出来ないだろう。
ステラも今宵のことは公爵家の名を守るため、誰にも打ち明けることはない。
「勝手な欲望を君に押し付けて、本当に最低だな僕は」
自分の身勝手さに失笑してしまう。
「だけどね、あの日あの時あの場所で僕に出会ってしまった君が悪いんだ
出会わなければ、こんな目にあう必要もなかったのに
可愛そうなステラ…
そんな君が何よりも愛おしいよ」
桃色の束を拾い上げて唇を落とす。
同色の長いまつ毛の中にある琥珀色の瞳が目を覚ました時、君はどんな顔をするんだろう。
そんな期待を胸に僕はステラの華奢な体をそっと抱き寄せた。
(end)