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偉大な魔道士様に騙されて体を捧げることになりました

第1章 魔道士との交渉



♦♦♦♦


大国ドゥリエラの王都中心部、そこに建っている真新しい館の広々とした廊下をしずしずと歩く私は今日、
この国唯一の魔法使いシヴァリエ・レオポルドへ謁見を申し込んでいた。

(落ち着いて、私がしっかりしなければ…
お父様もお母様もお姉様も必ず助かるわ)

謎の奇病にかかった私の家族はひと月前から床に伏していた。
そして先日、かかりつけの医者から“この病は魔法医術でしか完治しない”と告げられたのだ。

それを聞いて早急にこの魔道士が住む館へとおもむいたのだった。

前を歩いていた使用人が扉の前で立ち止まる。
焦りで早まる脈を沈めるように息を吐き、1歩前に踏み出した。

ぎぃ、と音を立てて開いた扉の奥の長椅子に腰掛ける魔道士の姿
銀色に輝く髪を揺らし、燃えるように赤い瞳を細めた彼は花がほころぶような笑顔で出迎えてくれる。


「これはまた可愛らしいお客人だね」


「はじめまして、シューベリル公爵家の次女ステラ・シューベリルです。
魔道士、シヴァリエ・レオポルド様
この度は謁見の機会を与えて下さりありがとうございます。」


完璧な作法でお辞儀すると桃色の真っ直ぐな髪が肩から数本落ちた。
(この方が…魔道士様)

“魔法”という特殊な能力を使える王宮お抱えの大魔道士だ。
政治、争い、生活、食物、観光、全てにおいてどこの国より発展しているのはこの方の力である。


「顔を上げて、貴族でも王族でもない僕にそんな挨拶は無用だ」


頭を下げたままの私に魔道士は困ったように失笑してから対面の長椅子へ座るよう右手で促した。

たしかにこの魔道士は貴族でも王族でもないが、数々の功績を上げ替えのきかない国唯一の魔法使いとしてある意味ではどんな貴族よりも高い位置付けになっている。

そんなお方に私が挨拶するのは当然の事だった


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