ぼくはキミを追い払えない 〜エクソシズム†ロストコロニー
第4章 クレリア・ラーナー
「腹が満たされたら少し眠たくなってきた
わたしは少し休むから教会のほうを見ておいてくれないか?祭壇の片付けが途中までなんだ
だれか来たら追い払って良し!
特にシモーネだったら追い返せッ!」
そう言ってクレリアは毛布にくるまった
「あぁ、そうだった忘れてた
今夜も電力が落ちるんだ、冷えるぞ」
そう言うとすぐに寝息が聞こえてきた
“この人眠りにつくのが早いよな?
それにしても食べたら寝るって
子どもと同じだ
豚になってしまうぞ?”
フィルは静かに部屋を出て建物の表側である教会のほうへまわっていく
すると祭壇のすぐ前、最前列のベンチにひとりの女性が座っていた
フィルは会釈だけ済ませ、祭壇の残りの荷物をまとめていく
「……あの、教会の方かしら?
修道士さま、クレリア様はいらっしゃいますか? どうしても司祭様にお話しが……」
「あいにく休まれております
今日は礼拝が立て込んでおりまして…
お疲れのご様子で……」
フィルは言われた通り、やんわりとお引き取り願おうと考えていた
女性はうなだれてしまってどうしたら良いのかわからないといった様子だ
「どうされましたか?司祭様の前に事前のお話しだけお聞きさせていただく事もできますよ?」
フィルが声をかけると女性はうつむいたまま泣き出してしまった
「……わたしの、わたしの娘が……
……悪魔に魅入られてしまって……
……わたし、どうしたらいいのか……」
フィルの顔が強張る
“……悪魔ッ!”
ふたりは教会を離れ、女の自宅へ向かった
教会からそれほど離れておらず、近くの雑居ビルの中へ入って階段を上がっていく
ビルは古めかしい居住区となっていて、マンションと言うにはあまりに暗く無機質のように思える
もともとはオフィスビルなのだろうが、コロニーが廃棄されるに伴い住人たちが生活空間に変えていったのだろう
鉄のドアを開けなくてもフィルにでさえ
邪悪な気配がわかる
“……生活に疲れた人のたわごとかとも思ったけど、これは違うッ!
ホンモノだッ!”
フィルは女に促され部屋へ入っていった
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