
自殺紳士
第14章 Vol.14:心中の娘
【心中の娘】
私には2つの秘密があるんだ。
ひとつは、私の両親のこと。
私の両親は、生活苦のため、
私が2歳のときに、一家心中を図ったんだ。
ガスが充満した部屋の中から、
私だけが運よく助け出されたの。
身寄りがなかった私は、児童養護施設に引き取られて、
里親制度に応募してきた今の両親に引き取られて、
ここまで大きくなった。
私は10歳まで、今の両親を
本当の両親だと思って暮らしていた。
きっかけは、学校で、血液型の話を聞いた時だった。
私はB型で、
『お父さん』はA型で、『お母さん』はO型だった。
なんで?と尋ねたとき、
両親は困ったように顔を見合わせて、
私に本当の両親がいること、
その方たちは亡くなってしまったこと、
そして、最後に
両親たちが、私を深く愛しているって、言ってくれた。
その時の『お父さん』が言った、
『亡くなってしまった』
という表現に、子供心に不吉なものを感じていたのを、
今でも覚えている。
私が両親の本当の死因に気づいたのは、それから程なくしてだった。
最初、両親の死因が自殺だと知ったときには、
『ふーん』というくらいにしか思っていなかった。
正直、顔も覚えていない人たちのことは、遠い遠いことのように感じられていた。
でも、成長するにつれ、
辛いことが増えてくるにつれ、
私の中で、その事実の意味が変わりはじめた。
両親が期待をしていた中学校受験に失敗したとき、
入学した中学校で、仲間はずれにあったとき、
初めての期末テストで、思うような点数が取れなかったとき、
私の心に『死』が忍び寄ってきた。
振り払っても、振り払っても、
血脈の奥から湧き上がってくる昏い気持ち。
私の中には、「自ら死を選んだ人達の血が流れている」
その思いは、まるで呪いみたい、だった。
私には2つの秘密があるんだ。
ひとつは、私の両親のこと。
私の両親は、生活苦のため、
私が2歳のときに、一家心中を図ったんだ。
ガスが充満した部屋の中から、
私だけが運よく助け出されたの。
身寄りがなかった私は、児童養護施設に引き取られて、
里親制度に応募してきた今の両親に引き取られて、
ここまで大きくなった。
私は10歳まで、今の両親を
本当の両親だと思って暮らしていた。
きっかけは、学校で、血液型の話を聞いた時だった。
私はB型で、
『お父さん』はA型で、『お母さん』はO型だった。
なんで?と尋ねたとき、
両親は困ったように顔を見合わせて、
私に本当の両親がいること、
その方たちは亡くなってしまったこと、
そして、最後に
両親たちが、私を深く愛しているって、言ってくれた。
その時の『お父さん』が言った、
『亡くなってしまった』
という表現に、子供心に不吉なものを感じていたのを、
今でも覚えている。
私が両親の本当の死因に気づいたのは、それから程なくしてだった。
最初、両親の死因が自殺だと知ったときには、
『ふーん』というくらいにしか思っていなかった。
正直、顔も覚えていない人たちのことは、遠い遠いことのように感じられていた。
でも、成長するにつれ、
辛いことが増えてくるにつれ、
私の中で、その事実の意味が変わりはじめた。
両親が期待をしていた中学校受験に失敗したとき、
入学した中学校で、仲間はずれにあったとき、
初めての期末テストで、思うような点数が取れなかったとき、
私の心に『死』が忍び寄ってきた。
振り払っても、振り払っても、
血脈の奥から湧き上がってくる昏い気持ち。
私の中には、「自ら死を選んだ人達の血が流れている」
その思いは、まるで呪いみたい、だった。
