悪いオンナ…2
第1章 【美大生の僕は魅力溢れる彼女に心奪われて…】
僕に、恋愛経験がないのは認める
キミの周りに居る男たちよりスペックは低い
興味本位で近付いて来たんだろうけど、
遊びなら、もう止めにしないか?
アトリエで会うのも次で最後だから……
もう近々、完成する
だから、今、ちゃんとはっきりさせておけば
キズが浅く済むと思った
取り返しのつかないところまで来ていたけど
いつまでも今の状態が続くと
自分が壊れる事は目に見えていた
「ガクはどうしたいの?現状維持じゃダメなの?」
やっぱりキミは、僕を欲しがらない
好きだとも、付き合おうとも言わない
核心は避ける
セックスがしたくなれば近付いてくるだけ
免疫のない僕は小さな事でも舞い上がって喜ぶから
アメを与えればホイホイついてくるから
「僕は……多希が欲しい、身体じゃなくて、心が欲しい」
それは我儘なのか?
結局、僕の思い上がりだったのかな……
ほら、困った顔してる
セフレだと思ってた相手がマジ告白してきて
ちょっと面倒くさいって思ってるよな
「あぁ……うん、そっか」
すぐに答えられないのか、言葉を選んで断ろうとしてるのか……
どのみち僕はキミの一番ではないって事だ
わかっていたさ
馬鹿だけど、馬鹿は馬鹿なりに玉砕しようとしてるんだ
期待してがっかりして……その繰り返しが辛くて
怖いけど、いっその事、その手で壊してくれよって……
「ごめん………」
無情にも彼女の言葉が静かな部屋に響く
ゆっくり立ち上がり、服を着て、この部屋から出て行く
僕じゃダメだった
僕は選ばれなかった
当たり前のように僕から去って行った
もうあの笑顔を向けられる事はない
あの温もりを感じる事はない
優しい声で僕の名を呼ぶ事はない
この部屋にも、キミとの思い出が有り過ぎる………