悪いオンナ…2
第1章 【美大生の僕は魅力溢れる彼女に心奪われて…】
そう言って力なく笑う
そんな事ないのに……格好つけ過ぎなんだよ
才能なんてない
僕は、右手を失ってでもキミが欲しかった
描けなくても良いから、キミに居て欲しかった
そう思ってる時点でダメなんだよな
絵の描けない僕にキミは何の魅力も感じてくれないだろう
「好きだったの?珍しく多希から近付いた感じ?」
「ぜーんぜん好きじゃなかった、ふふふ」
「うわ、最低!この子最低!キャハハ!」
それが本音なんだろう
あの日でサヨナラ出来た事は間違いじゃなかった
そうだ、こんな事で立ち止まるわけにはいかないんだ
でも僕だって前に進む為には嫌でも通らなければならない道がある
後日、布に包んだキャンバスを手に僕は大学内を渡り歩いている
今更だって思われても構わない
見つけた、やっぱりキミの周りには人が溢れているけどそんなのは問題ない
キミに嫌われてももう何とも思われてないんだから
意を決して一歩ずつ近付いていく
え…?誰…?とか言われるのも慣れているから
ようやくキミが僕に気付いて、ゆっくり椅子から立ち上がる
注目の的だって事もわかっているよ
これくらいしないとキミは捕まらない
久しぶりに聞いたキミの声
「ガク」ってまだ呼ぶんだ?
見限ったくせに……
僕が持っていたキャンバスを見た瞬間、彼女の手を引いてその場から連れ去った
騒然となっただろう
知らない誰かがあの長谷川多希の手を引いて何処かに行ってしまったんだから
使われていない講義室に連れ込んだ
怖がらせないようにドアは開けっ放しにして
キャンバスの布を取り払い、彼女に向けて見せた
完成したのを見せないまま終わりなのは嫌だったから
独り善がりで良い
僕の全てを今の彼女にぶつけたかった
そして堂々と言うんだ