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キセキ

第6章 Vol.6〜勝利と勇気

【Vol.6:He runs for me】

「天宮選手には勝ってもらいたいんだ」
そう言って、少年は僕の目を真っ直ぐ見た

そのころ、陸上選手としての
僕はスランプに陥っていた
2年前のオリンピックでの予選敗退後、
記録は全く伸びず、
次の国際大会への出場も危ぶまれていた

僕の中で
走ることの意味が空回りしていた

少年とは、彼が送ってきたファンレターをきっかけに知り合った
『天宮選手にはオリンピックに行ってほしい』
『頑張って欲しい』
『僕が次の運動会で一位になったら
 天宮選手も頑張ってくれますか?』
とあった
そして、彼の小学校の
 運動会の日時と場所が書いてあったのだ

僕は、その少年に会いに行った
少年は僕を見るとひとしきり興奮した様子で
握手を求めたり、
走り方のコツを尋ねたりしてきた

そして、最後に言ったのだ
「天宮選手には勝ってもらいたいんだ」と

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