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キセキ

第7章 Vol.7〜記憶の先に

【Vol.7:The kind words that supported her】

あたしには、どうしても思い出したいことがあった
思い出そうとしても霧のように逃げてしまう言葉
それは、父の言葉だった

その日、父と私は一緒に登校していた
私は母に何かでひどく怒られ、落ち込んで
不機嫌だった

父と私は手をつなぎ歩いていた

そこで何かを話していて
どんな話だったのか、
突然、父は立ち止まり
私の背までしゃがんで
何かを言ったのだ

私の目を真っ直ぐに見つめて

父とちゃんと話したのは
それが最後だった

父はその後、出張先で事故にあって
帰らぬ人になった

あの言葉は何だったのだろうか
なにか大切なことだったような気がするのに
思い出せないでいた

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