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キセキ

第7章 Vol.7〜記憶の先に

「君とそっくりだね」
夫は笑う
そして、寝ている息子の頭をなでて言った

「そんなに一人でやらなくていいんだぞ
 世界は君の味方だ」

ーえ?

私は脳の奥がちくんとしたように思った
あの日の父の言葉が
心をよぎったのだ

夫の言葉があの日の父の言葉に重なる
焦点を結ぶ記憶
ああ・・・

そう、父は言ったのだ
「世界は君の味方だ。
 だから怖がらなくていいよ」


「思いだした!」

私は声を上げる

ーああ、キセキだ

 父はこんなふうに私に言ったのだ
「世界は君の味方だ」


だから私はここまでこれた
 だから私は生きてこれた
父の言葉は
 私を知らないうちに支えていた

私は頬に涙を感じた

「どうしたの?」
夫は私の方を振り返り
 笑い泣きをしている私を
不思議そうに見ていた

「なんでもない・・・」
なんだかうまく今の気持ちを言えなくて、
私はつい、こんな風に言ってしまった

でも、いつかこの優しい人に聞いてもらおう
 あなたの言葉で思い出せた
 このささやかなキセキのお話を

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