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キセキ

第2章 Vol.2〜教会の祈り

【Vol.2:The Prayer to Heaven】

「9年前、私の息子は、
 大きな地震があった外国の地に、
 教会ボランティアとして参りました。
 そこで、多くの被災者のために物品を配ったり、
 医療活動に従事したそうです。

 ところが、息子は死にました。
 見回りをしていたときに起きた余震のため、
 建物の倒壊に巻き込まれてしまったのです。
 私は日本で、冷たくなった息子を迎えることになりました。

 教会の神父様も、息子の友人も、
 息子は神の使命を果たしたのだと、
 天の国に召されているはずだと、
 そう、おっしゃいました。

 でも、ダメなんです。
 私は、息子に生きていてほしかったんです。
 どうしても、どうしても、
 あれが、カミサマの意志に適う『良いこと』とは
 思えないのです。

 もし、あれが神様の御意志なら
 私は神様を恨まずにはいられません。

 私は罪人なのです。
  どうしても、息子の死を、
 祝福されたものと・・・思えないのです。」

ご婦人は静かに涙を流しているようでした。

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