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キセキ

第2章 Vol.2〜教会の祈り

毎年、ご婦人はこの日に教会にいらして
 この話をしていきます
我々は何も言うことができません。
 ただ『神のご加護を』と祈ることしかできません。

それは、ご婦人の望む答えではないことはわかっていましたが、
どうすることもできませんでした。
 
今年も、この日が参りました。
 ご婦人は10時に必ず参ります。

「10年前、私の息子は、
 大きな地震があった外国の地に、
 教会ボランティアとして参りました。
 そこで、多くの被災者のために物品を配ったり、
 医療活動に従事したそうです。

 ところが、息子は死にました。
 見回りをしていたときに起きた余震のため、
 建物の倒壊に巻き込まれてしまったのです。
 私は日本で、冷たくなった息子を迎えることになりました。」

10年間、変わらない話が続きます。

「先日、ホテルのレストランに参りました。」

違う話が始まったことに私は驚きました。

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