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キセキ

第11章 Vol.11〜一通の手紙

ある時
 家への帰り道
その日は初めて鉄棒で逆上がりが出来た
クラスで一番最後だったけど
がんばって、がんばって
 私はやっとできたのだった
一回できればかんたんだった
 なんで今までできなかったのだろうと思った

その日はぼんやりしていなかった
 目も耳もはっきりしていた
私は走って大急ぎで家に帰った

玄関の扉の鍵がなかなかあかない
 ガチャガチャと鍵を合わせて

ああ!やっと開いた!

「お母さん!
  まいちゃん鉄棒できたよ!!」
私は大きな声で言った!

・・・ 家は黙っていた

私はキッチンに行った
「お母さん!」

ベッドルーム
「お母さん!!」

トイレ
「おかあさ・・・ん」

みんな静かだった

お母さんの笑顔はなかった

エプロンを付けて
 おやつを作って待っていてくれたお母さん
逆上がりが出来て
 良かったねとなでてくれるはずだったお母さん

お母さんの声も
 においも
どこにもなかった・・・

私は急に涙が止まらなくなった
 なんどもなんども鼻水をすすり上げた
大きな声で泣いていた

どんなに 泣いても
 お母さんはいないのだ

お母さんはいないのだ
もう、いないのだ

その日から私は泣き虫になった

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