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キセキ

第12章 Vol.12〜魔法の時間

なんと言ったらいいのだろう・・・
 僕は母への言葉を探しました

何分経ったのか
 キセキの時間が終わってしまう
終わってしまう、その前に・・・

僕は妙な焦燥感を感じていました
 そして、病気になった母をその時、初めて
見つめた気がします

ーお母さん・・・

自然と僕の口から言葉が紡がれていきました

ー産んでくれて、どうもありがとう

母が心なしか手をぎゅっと握った気がしました
 母の眼から涙がこぼれ
頬を伝います

その後、僕はずっと母の手を握っていました

それから程なくして
 母は永眠しました

先生は、
 母は最期、穏やかな顔だった
とおっしゃいました

僕はあの日の、
 先生がくれたキセキの5分を

多分、一生忘れないでしょう

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