無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

宿の部屋で腰を下ろしたしおんは、再び神様から渡された本を開いた。
そこにはこの世界の暮らしに役立つ知識が細かく書かれている。

「……この街では水で身体や食器を洗うのか」

どうやら井戸や川から汲んだ水を使うのが一般的らしい。
ページをめくると、ふと目を引く一文が目に飛び込んできた。

《スライムは掃除や洗浄に使える便利な存在である》

「……スライムが掃除？🤔」

思わず笑みが漏れる。
草原で初めてスライムを見た時から、しおんはどこか「これは何かに使えるかもしれない」と直感して捕獲していたのだ。
その予感が、いま現実になろうとしている。

もし自分が村を作る時に応用できれば――井戸や排水路すら不要になるかもしれない。
胸がわくわくと高鳴る。
ちょうどその時、空の上から声が響いた。

「おお〜わしが与えた本をきちんと読んで偉いの👏🏻スライムの使い道は無限大なのじゃ。」

楽しげな神様の声。しかし、もちろんしおんには聞こえていない。
ただ天井を見上げて「気のせいか？」と首を傾げただけだった。

「……試してみるか」

そう呟き、バッグから捕獲していたミミズのようなスライムを取り出す。
恐る恐る体に押し付けてみると、ぬるりと這い回り、頭や腕、胴体の汚れをみるみる吸い取っていく。
「……本当に……役に立つじゃないか」
確信めいた喜びが胸を打ち、しおんは思わず頷いた。