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リーニエント

第4章 ジャスミン


「かい君!」
「海斗(かいと)」

声のした方へ向くと、ふたり同時口にした。

海斗―五十嵐 海斗(いがらし かいと)は学園生徒会長であり、北斗とは二卵性の双子。兄にあたる。

「莉茉ちゃんさ、いい加減にしないとウザがれるよ?」

黒く細いフレームの眼鏡が反射で光る。
北斗とは対照的な冷たい印象を与える海斗は、莉茉に向かって口端を上げた。

「ひどーい、かい君!いつも意地悪ばかり!」

北斗と幼なじみである莉茉は当然、海斗とも同じ関係。

海斗の声色が冷めていようと、怯むことはない。
彼女にとっては出会い頭に交わす挨拶のようなもの。
つまり莉茉をからかっているのだ。

「そんな事、海斗に言われたく無いんだけど」

落ち着いた口調の声が割って入る。

「きた君!?」

莉茉の肩に手をかけ、海斗に向き合う。
ほぼ同じ身長の双子が並べば、迫力も倍になる。
莉茉からしたら十二分に巨体となる彼等に挟まれ、とても居心地が悪そうだ。

「あのさ北斗、甘やかす以外にする事あるだろ?こじらせてんなよ」

「何言ってんの、海斗」

腕時計を見て、海斗は莉茉の頭を一撫ですると踵を返した。

「鈍感な奴ほど手に負えねえってな」

海斗はひらひらと手を振りながら、再び渡り廊下を歩き出す。

善くも悪くも、この三人はとても目立つ。

「莉茉、まだ時間あるし……場所変えよっか」

海斗を見送る中、人が集まり始めたのに気付き小さな手を引いて促す。

若干駆け足でたどり着いたのは、中庭を抜けた奥に建つ温室。
観葉植物ばかりのここは意外と穴場なようで、人は見かけなかった。

「きた君、大丈夫?保健室、行く?」

「大丈夫、大丈夫だから」

先程の赤面事件を振り返り、心配する莉茉。
彼女の瞳が視界に入ると、火照る感覚が再びぶり返しそうになるがなんとか堪えた。

「よかったあ」

ふにゃりと崩すように笑うその顔は、北斗のお気に入りである。
昔のままの変わらない笑顔に、彼の顔も緩むのだ。


「ほんと……莉茉には負けるよ」

ベンチに腰を降ろした北斗は、傍らの小さな身体を抱き寄せる。
鼻腔を擽る甘い香りに感化され、壊さないかと緊張しつつ力を入れた。
彼女の鼓動がよくわかる程密着したのは、初めてかもしれない。

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