
リニエンアナザー
第1章 クロタネソウ
何故か語尾を強調された。関係無いなんて言われて、首を縦に振るべきなのか……。
『お前にとって……そんなモン……』
不意に脳内で再生された黒谷の台詞。もしかして、これは先刻の仕返し?
胸元のリボンタイが自身の呼吸と共に上下する様子を幾ばくか見送ったあと、千種は唇を尖らせる。
「皆から好かれるタイプだもんね、黒谷は」
男らしさが増したとは言え、元来の愛嬌も伴い可愛さのある内面は健在だ。
それを垂れ流している状態の彼は人タラシと言っても良いくらいだろう。
「ははっ、千種。その顔は卑怯だって」
「え?」
不安を表すかの様に下がった千種の眉尻。
そこへ黒谷の親指がさらりと触れた。
「なあ、千種?俺はさ、お前が思う程出来た人間じゃないよ」
「どういう意味……?」
ワントーン低くなる黒谷の声に、図らずも心臓が高鳴る。
見上げた先の喉仏が上下する動作に、目が離せなかった。

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