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いなくなった人、残された人。

第3章 ケース3:浦島太郎の場合

【亀をイジメていた悪ガキたちの会話】

「なぁ?聞いたか?浦島、亀にさらわれて海に連れていかれたらしいぞ」
「違うだろ。漁に出てるときの事故で海に落ちただけだろ」
「いや~、だって俺、大人たちが話してるの聞いたもん。巨大な亀の背中に乗せられて連れていかれたんだって!」
「亀の復讐かなぁ……」
「だったら俺らもヤバイんじゃね?」
「しばらく海辺には近づかんことにしよ。死にたくねぇ」


【一方その頃、太郎の母】

……あの子がいないと、家の中が静かねぇ。

太郎の使っていた茶碗を手に持って眺めてみる。
……縁が少し欠けている。
太郎の使っていた布団、太郎の着替え。

海の神さま…おそらく龍神さま…に気に入られて海へと連れていかれたのなら、もうここに返ってくることは無い。

寂しい気持ちと、ホッとする気持ちが入り交じる。

小さい頃はとてもとても可愛かった。素直で優しかった。
大きくなるにつれ、外での評判の良さとは裏腹に、気に入らないことがあると家の中では暴れて鬱憤を晴らす、ということもあり、私は、今では日々怯えながら暮らしていた。

息子の機嫌を損ねたら脛を蹴られる。背中を殴られる。着物で隠れて世間様には見えない場所ばかりをやられた。

いい年して嫁も貰わず、私のことを「飯炊きババア」と呼び、こき使う。それでいて外づらだけは良く、周りからは
「孝行息子」と呼ばれている。

龍神さま……あの子を連れて行って下さり、ありがとうございます。あの子をよろしくお願いします。

私は、海の方へ向いて手を合わせた。

【ケース3:浦島太郎の場合 ~完~】


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