戻れない場所
第2章 1
12月18日。
今日はとうとう初デート。
凄く待ち遠しくて、期待と不安に満ち溢れていた。
服選びも髪型もいつになく真剣で、初々しさが伝わってくる。
「よし!」
私は待ち合わせに遅れないようにと、早めに家を出た。
「…20分前に着いちゃった。」
彼との約束の場所。
当たり前だが、まだ彼の姿は見えない。
私が近くの本屋で時間を潰そうと振り返ったとき、
「真奈…?」
目の前に彼が現れた。
「優矢?」
「そうだよ。楽しみで早く家出ちゃって…。でも真奈の方が先に来てたからびっくりした。」
彼は優しく微笑む。
「行こうか。」
「うん!」
私と彼は改札へと向かう。
(あ、切符買わなきゃ…。)
そう私が思った瞬間、目の前に切符が差し出された。
「え?」
「買っておいた。お金いいから。」
「え、でも…。」
「いいの!俺、一応彼氏だし。ちょっとはカッコいいことさせてよ。」
彼はそう言って、先に改札を通り抜ける。
彼氏…。
そう言った彼の頬が少し赤かったのに気づいていた私は、ハニカミながら彼の後を追った。