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淫らな死体~お嬢さま春泉の秘密~④

第7章 天上の楽園

「嫌いではない―というのは、つまり、お慕いしているということなのですか?」
 問われ、春泉は緩く首を振った。
「判らない。慕っているというのとは、多分、少し違うと思う。でも、〝好き〟という気持ちに近い感情があるのは自分でも認めなくちゃいけないかも。あの方のことがとても気になって仕方ないし、あんな―すごく嫌なことをする秀龍さまなんて、嫌いになるはずなのに、私、今でもやっぱり、秀龍さまを嫌いじゃない」
「―旦那さまもやはり、お嬢さまをお好きなのだと私は思いますけどねえ」
 オクタンの言葉に、春泉は頷いた。
「そんなような意味のことを何度か言われたわ。ひとめ惚れだとか、何とか。でもね、オクタン、そんなのって、おかしいと思わない? 普通、好きな娘(こ)相手に、無理強いしてまで押し倒そうとするかしら。私がもし男の立場だったら、好きな女の子にはうんと優しくするし、優しいってのは、その人の心を尊重するってことでしょ。間違っても、自分の気持ちを優先させるために、相手の気持ちを無視して事を運ぼうとすることではないと思うわ」
 だから、と、春泉は続ける。
「秀龍さまが私をお好きだというのも、あまり信じられない。何だか、口先だけの科白のように思えてならないのよ」
 不満げに頬を膨らませる春泉を、オクタンは慈愛に満ちた瞳で見つめた。
「それはとても難しい問題ですね、お嬢さま。私には難しいことはよく判りませんですけど、お嬢さまの倍以上長く生きてきた人間としてなら、そのことについてお応えできると思いますよ」
「何でも良いの、オクタンの意見を聞かせてちょうだい」
 春泉が促すと、オクタンは笑って頷いた。
「お嬢さま、この世の中には男と女がそれぞれ半分ずついますけれど、男と女が大きく違うのは、どこだと思います?」
「うーんと、いきなり、難しい質問だわね。ええと、何かしら、まずは外見、身体のつくりが違うわよね? 後は、それから、性格とか、好みとか、そんなところかしら」
「おっしゃるとおりですね。男と女は身体も性格も随分と違います。私が申し上げたいのは、お嬢さま、殿方と女人では、愛し方も違うということなんですよ」
「愛し方が違う―?」

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