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淫らな死体~お嬢さま春泉の秘密~④

第8章 夫の秘密

 夢を、見た。
 秀龍と誰か知らない女人が裸で向かい合い、絡み合っている。
 秀龍の膝の上に、見知らぬ女がこれ以上はないというほど脚を開いて座っている。
 秀龍が動く。
 女が躍る。
 秀龍が烈しく腰を突き上げる度に、女の白雪のような身体が弓なりに仰け反る。
 背中に解き流した艶やかな黒髪は腰まで届き、女の動きにつられるように揺れた。
 弾むように、黒髪が揺れ、躍り、跳ねる。
 長い豊かな髪は、それ自体が意思を持つ生きもののように蠢いた。
 秀龍が女を見つめる。
 熱く、濡れた視線。
 その視線がじいっと注がれるその先には。
 両手のひらに零れんばかりの女の乳房が弾んでいる。
 秀龍のまなざしが更なる熱を帯び、その手がたっぷりとした乳房を包み込む。
 唇が女の白膚を丹念に辿ってゆく。
 うなじ、鎖骨、臍の窪み。
 女の胸のふくらみが秀龍の情熱によって尖り、上向く。
 秀龍の口は尖った薄紅色の先端を呑み込み、強く吸い上げ、女はあえかな呻き声を洩らす。
 次第に強く烈しくなってゆく秀龍の動き。
 逞しい身体の上で跳ねる女のしなやかな身体。
 二人はまるでぴったりと息のあった舞踏を繰り広げているようにも見える。
 秀龍の動きが最高潮(クライマツクス)に達したまさにその瞬間、女がひときわ大きな嬌声を放った。
 秀龍の情熱が女の最奥で弾け、女は彼のすべてを貪欲に呑み込んだ。
 秀龍はそれでもなお、己れのすべてを注ぎ込もうと、女を深く強く刺し貫く。
 
「―泉、春泉」
 はるか彼方から、誰かが私の名前を呼んでいる。
 私を呼ぶのは一体、誰?
 あれは、夢? 
 秀龍さまと私の知らない女(ひと)が抱き合っていた。あんなもの、私は見たくなかったのに、どうして見てしまったのだろう。
 夢だとしても、あんな光景は見たくないのに。たとえ、先刻、見た光景が夢の中の出来事だとしても、秀龍さまが私以外の誰かをあんな風に熱っぽい視線で見るなんて、いや。

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