テキストサイズ

淫らな死体~お嬢さま春泉の秘密~④

第10章 予期せぬ真実

「では、今も秀龍さまは、身寄りのない子どもたちを集めて面倒を見ていらっしゃるのですか?」
 是非、訊いておかねばならないことだ。もし、これからも秀龍の傍にいられるのなら、春泉も彼の助けになれるかもしれないし、また、何よりも愛する男を支えたいと思ったのだ。
 秀龍は少し照れ臭げに頷いた。
「本当はこの話はあまりしたくなかったんだ。自分が好きでやってることを、さも良いことをしているように人に話すのは好きではないからな」
「そんなことをおっしゃらないで下さい。私は少しでも秀龍さまのお力になりたいのです。私にも、あなたさまがなさっていることのお手伝いをほんの少しでも良いから、させて欲しいのです」
 その言葉は、秀龍の心を動かしたようであった。
「ありがとう、春泉。そなたの口から今日、そのような言葉が聞けるとは思ってもみなかった。ならば、そなたは私と共に皇家に戻ってくれるのだと、そう理解しても良いのか?」
 秀龍の顔が輝いている。こんなに嬉しそうな表情の彼を見るのは初めてだ。
「はい」
 春泉の声は小さいけれど、実にはっきりとしていた。
「でも、秀龍さま。一つだけ、まだ判らないことがあります」
 何故、英真が翠月楼の妓生香月となったのか。秀龍が香月と恋人同士であったという誤解は解けたものの、まだ大きな謎が残っている。
 春泉の想いが伝わったかのように、秀龍は頷いた。
「その謎解きは実に簡単だ」
 秀龍は笑いながら言った。
 英真には半端でない女装趣味があったのだと。
「明賢と英真は男二人だけの兄弟だった。英真はやんちゃで庭を駆け回っていたが、実はよく母親に女の子の格好をさせられていたんだよ。まあ、女親にしてみれば、一人くらいは娘が欲しいものらしいから」
「それが女装への憧れに繋がったのですね」
「まっ、早い話がそういうことだな。みなし児たちが集まって暮らしている住まいを私たちは〝家〟と呼んでいるが、英真は五年前にその〝家〟を飛び出したのだ。ある日、突然、〝俺は妓生になる〟と叫んでな」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ