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淫らな死体~お嬢さま春泉の秘密~④

第15章 八年後

「あっ、い、いや。それは、そのだな、お母さまは昔っから、今のように淑やかであった。当たり前ではないか、そなたのように男の子と間違えられかねないほど大声を出して走り回ったり、乳母の眼をごまかして勝手に町へ遊びに出かけたりは絶対にしなかったぞ」
 気のせいか、最後の台詞には特に力がこもっていた。
「旦那さま、普段は口数の少ない旦那さまが今日はよくお話しになられますこと」
 痛烈に皮肉られ、秀龍は、つい喋りすぎたと〝コホン〟とわざとらしい咳払いでその場をごまかした。
 恵里は蒼くなったり紅くなったりする父と、父を睨みつけている母を面白そうに見ている。
「お父さま、お母さま、要するに、私もお母さまのように、こんなお転婆な私でも良いと思って下さる方にめぐり逢えれば良いのですね」
 そのませた物言いに、秀龍と春泉は思わずどちらからともなく顔を見合わせる。

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