俺を好きだと言ってくれ
第2章 *出逢い..
テラスのここの席は長椅子だから、玲央が来てから隅に追いやられた美優は物凄く窮屈に感じた。
『そういや、空は?』
龍平の言葉にパスタを巻く美優の手が止まった。
そしてチラッと向かい合って座るあかりと目を合わせた。
『由紀と食うって』
『あぁー、
そういや由紀帰国したもんな。』
由紀という名前に心臓が握り潰され、思わずフォークを置いた。
『長いよな、由紀と空も』
「………」
由紀さんは三島由紀という城華学園附属大学の2年生―…
幼稚舎から空と一緒で、腐れ縁が恋愛に発展したパターン。
由紀さんは1年間の留学に行ってて、最近一時帰国したらしい。
「…ごちそうさま」
「え、美優?」
「ごめん。
お腹痛くて……」
「大丈夫?」
「うん、ごめん…」
トレーを持ち上げようとした瞬間、カタッとフォークがお皿から落ちて、玲央の腕に触れた。
「…あ。」
気付いた時にはもう遅くて、よりによってこの男の制服の袖を汚してしまうなんて―…
「ごめ『チッ…触んな』
せめてもの償いのつもりで、紙ナプキンで拭き取ろうとしたら、その手を思いっきり払いのけられた。
気まずさのせいで、その場の空気が重くなり誰も口を開こうとしない。
『…早く行けよ』
玲央の言葉は、まるで『消えろ』と言うように冷たく鋭い。
「うん……ごめ………」
最後の「ん」まで言えなかった。
由紀さんの件での動揺と、玲央に対する恐怖心で何故か瞳に涙が溜まった。