俺を好きだと言ってくれ
第2章 *出逢い..
私がこの高校に入学した時から由紀さんは有名だった。
2つ上の先輩で、本当に美人で、誰に対して優しくて、運動も勉強もできて、天は二物も三物も与えてしまう、憧れすぎて嫉妬なんてしなかった。
神崎くんの彼女だと知った時も、ショックを受ける前に思わず頷いてしまった。
やっぱり神崎くんの隣を歩くには、それ相応の美貌の持ち主じゃなきゃって納得した。
『ちゃんと出た?』
「…え?」
『トイレ、行ったんでしょ?』
席に座って窓の外を見つめてたら、平気な顔をしてデリカシーのないことを聞いてくるのはモッチー。
「な…なんでトイレなんか………」
『あれ?腹痛いんじゃないの?』
モッチーの言葉にハッとした。
そうだ、私は嘘ついてたんだ。
「あ…なんか、
教室来たら、大丈夫みたい……」
『ふーん。そっ』
私の前に座るモッチーは、私が神崎くんのことを好きなんて知らない。
話したって呆れられるだけ。
「やめとけ」「諦めろ」としか言わないに決まってる。
「ねぇモッチー、」
『ん?』
でも、いっそのこと、そう言われて諦めさせられた方がいいのかな―…
「お前には無理だ」って高笑いされれば目が覚めるのかな―…
「…いや、やっぱり何でもない。」
『変な美優(笑)』
モッチーを始め、神崎くんも桐谷くんも、個性が強すぎて共通点が見当たらない。
なぜこの3人が仲良しなのか、私にはわからない。
「モッチーは彼女作らないの?」
『ん?そうだねー………
美優は?ずっといなくない?』
「今はモッチーの話!」
『俺はみんな好きだから!
特定の女の子っていうより女全般に好き(笑)』
モッチーが言うからか、妙に納得してしまう言い訳。
女好きってわけじゃないけど、モッチーの性格から女の友達が多い。