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第3章 暴走体

奏が足を止めたのは5分後、近くの海辺だった。
そこにひとりの男が立っている。

「かなちゃん、あの人?」

奏は頷くと手にしていた愛刀えお音もなく鞘から刀を抜いた。
奏の愛刀、珱(よう)と燦(さん)。左利きの彼は珱での戦闘が多い。苦戦を強いられたときは燦も抜き、二刀流となるが、基本は左手一本だ。
鞘から解き放たれた珱の刀身は漆黒。黒く深く黒光りしている。

数分後、奏は男から目を離さず凝視したまま静かに口を開いた。

「サク、抜いとけ」

そろそろ始まると言うのだろうか。
咲耶はうん、と頷きながら愛刀、裂冥(さくら)を鞘から抜く。
奏の珱より長い長刀だ。その刀身は珱のように黒く深く冥く輝く。
咲耶は刀の名を呼びながらその刀身をなでた。

「裂冥…」

裂冥の刀身が咲耶に応えるように輝きを増したようにみえた。

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