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第3章 廃工場の夜

すぐそばで恐怖で大声を上げ助けを求めていた男が居たのに助けに入れなかった。

それがなんとなく見殺しにした様な罪悪感にかられた、三人は危機が去ったあとも言葉を失ったままだった。


竜崎はさっとドアを開け、廊下の安全を確認してからすばやく廊下に出た。


小石川とほのかもそれに続く。


三人は今更ながら耳たぶを切られてしまった男を助けに近づいた。


廊下には血が流れ、壁にも耳を切った際に飛び散ったと思われる血飛沫がかかっており、その模様がなんとなく現代アートの抽象画のような模様にも見えた。


うす暗がりで耳あたりを押えて、がたがたと震えている男にほのかは恐る恐る声を掛ける。


「大丈夫ですか?」


「うわぁああああ! もうない! もうないぞ! 耳たぶはもうない!! く、来るなッッ!! もうないからっっ!!」

先ほどの奴が帰ってきたと思ったのか、それとも他の耳たぶハンターがやってきたと思ったのかわからないが、耳たぶを斬り取られた男は気が触れたような勢いで叫ぶ。

「あ、安心して下さい!! 私たちは助けに来たんです!!」


慌ててほのかが声を掛け、男の肩に触れた。


「やめろっっ!!触るな!」


荒々しくほのかの手を叩き払い、男は完全に正気を失った目つきで立ち上がると全速力で逃げ出した。

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