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姉とのこと

第1章 小さな約束

ある夜にトイレに起きた姉が
弟を呼びに戻ってきた。

「正ちゃん,ちょっと来て」

正一は眠い目をこすりながら
姉に手を引かれてついていった。
階下で話し声がするというのだ。


その日は幼稚園で
「座敷童」の話を聞いていたので
姉は座敷童だというのだ。

座敷童と聞いて正一の目が覚めた。
階段を下りると
確かに声が聞こえた気がした。


一階にはリビングと両親の寝室,
風呂とトイレがある。
普通に考えれば両親の話し声なのだが、
座敷童だと思い込んでいる二人には
疑う余地がなかった。
はっきりと聞き取れない会話も
座敷童の声に聞こえたのだろう。


姉が指を口元に持って行き
「しー」とやるので
正一も「しー」と返事をする。

廊下の電気は消えていて暗くなっていたので,
正一はドキドキしながら姉の手を握って歩いた。

両親のベッドルームに近づくと
また姉が「しー」と合図するので
正一も真似をした。


部屋のドアが少し開いていて
少し明かりが漏れている。
部屋の中に座敷童が居ると思い込んでいる二人は、
座敷童に見つからない様に扉の隙間から
そ〜と中を覗いた。

薄明かりの中に人影が見えたが、
それはベッドの上に座っている
両親の姿だった。

両親は抱っこしては
小声て何かを話しながら
幾度もキスを交わしていた。

両親のキスは普段から見慣れているが,
お風呂でもないのに裸でいることが
二人には不思議だった。

両親はそのまま横になったので寝るのだと思い,
二人も自分の部屋に戻ることにした。


階段を上がると4畳半と6畳の二部屋を
1つの子供部屋にリフォームした姉弟の部屋と、
物置になっている部屋にトイレがある。


座敷童に会えると思って
ドキドキしていた二人は
ひどくガッカリしていた。

「童さん,居なかったね」

部屋に戻り布団に潜り込んだが
両親の姿が頭から離れなかった。
とはいっても幼稚園児に
両親の夜の営みのことなど
理解できるはずもないが、
それは幼子の考えが
解決してくれる事となる。

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