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逃亡少女と逃亡悪人

第4章 不安

それから私は食事と入浴といった生活を主として数日過ごした。
入ってくるのはだいたい幹部のエックスかキュウ、ケイ。
最初に姉の伝言を伝えてくれたディーはあれから見なかった。
それにエースやアイといった最初にしか姿を見せなかった幹部達は依然と会うことはなかった。

私が外に出るのはやはり不可能。
ドアはどんなに体当たりしてもびくともしない厚いものだったし、どちらの部屋にも窓もないのだから。

「外見たいな」

一人でずっといるままだと、人間は独り言が多くなるらしい。
私は時には自問自答しながら自分を保っていた。

日の光も木々の緑も小鳥の鳴き声も全然接していない。
このままではおかしくなってしまいそうだった。

そしてそろそろ・・・逃げる計画を立てる時だとも思っていた。
この部屋に閉じ込められ数日。
逃げるチャンスは、幹部の誰かがこのドアを開けた時以外にない。
しかもキュウのような大柄黒人に勝とうなどとそのような愚かなことも考えていない。
キュウほどでもなくても高身長なエックスも駄目だ。
となると、一番の狙い目は日本人のケイがこの部屋に入ってきた時だろう。
彼が来るのは、ご飯を持ってくるときかトレーを下げる時だ。

私はこの部屋の外へと繋がるドアへ集中した。
エックスとケイはこの部屋に来るとき、全く気配なくやってくる。
彼らが何者なのかは知らないが、ただの一般人ではないことは確かだ。

(気配がわからないなら、ドアを開けた瞬間に覚悟を決めるしかない)

ドアからケイが見えたらその瞬間に、ケイの脇をすり抜ける。
ケイという男性は男の人にしては細身なため、私くらいならばドアと彼の隙間をすり抜けることが可能だろう。

「次、来たときがチャンス・・・」

どくん。

鼓動が大きく鳴った。

どくん、どくん。

どんどんと高鳴るほど、自分が緊張と恐怖に包まれていくことに気がついた。

(私は強くなるの、大丈夫)

うるさいくらいに鳴る胸に右手を添え、大きく息を吸う。

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