魔境夢想華
第4章 魔物《凜視点》
女子生徒たちを虜にさせる涼やかな視線は影を潜め、今は獲物を捕らえた野性的な瞳。その瞳は徐々に藍色にと発光し、俺へと見下すようにして向けられていた。そして口唇は耳近くまで引き寄せているのではないかと思わせるぐらい、口端を上にと上げ、尋常ではない雰囲気が先輩を中心に醸し出されている。
「……な、何……?」
歪み始めた先輩の姿に俺の心身は恐怖に駆られ、先輩から逃れようと身じろぎしようとするが、押さえられた肩を中心にびくとも動かない。この痩身の何処にそんな力が隠されていたのか。先輩からの拘束から逃れる術はなかった。
そのうち痺れから来るのか、全く力が入ることは敵わず、まるで金縛りにあったような錯覚さえ与えられ、俺は自分の置かれた状況にひどく混乱してくる。
「……そう、目を付けていた……」
先輩の歪んだ口唇からそれは放たれた。穏やかに紡ぎ出す聞き慣れた声音ではなく、地の底から這うような低音がそれから洩れる。
『お前からは……そこらの人間とは違う美味な香が放たれておる……』
明らかに先輩の声とは違う異質の声。
不穏な空気がたちまちにして立ち込め、俺たちがいる空間は淀み、先輩の全身からは黒く歪んだ気(オーラ)を発していた。すでに人間とは言い難い醜悪なそれは俺へと被さるようにその身を更に近付けてきた。
「来る……な……」
恐怖心から打ち勝とうと全神経を総動員して、震える身体を隠すように声を振り絞ってみるが、かえってそれは掠れた声しか出ず、惨めな姿を見せつけるようなものだった。
「……な、何……?」
歪み始めた先輩の姿に俺の心身は恐怖に駆られ、先輩から逃れようと身じろぎしようとするが、押さえられた肩を中心にびくとも動かない。この痩身の何処にそんな力が隠されていたのか。先輩からの拘束から逃れる術はなかった。
そのうち痺れから来るのか、全く力が入ることは敵わず、まるで金縛りにあったような錯覚さえ与えられ、俺は自分の置かれた状況にひどく混乱してくる。
「……そう、目を付けていた……」
先輩の歪んだ口唇からそれは放たれた。穏やかに紡ぎ出す聞き慣れた声音ではなく、地の底から這うような低音がそれから洩れる。
『お前からは……そこらの人間とは違う美味な香が放たれておる……』
明らかに先輩の声とは違う異質の声。
不穏な空気がたちまちにして立ち込め、俺たちがいる空間は淀み、先輩の全身からは黒く歪んだ気(オーラ)を発していた。すでに人間とは言い難い醜悪なそれは俺へと被さるようにその身を更に近付けてきた。
「来る……な……」
恐怖心から打ち勝とうと全神経を総動員して、震える身体を隠すように声を振り絞ってみるが、かえってそれは掠れた声しか出ず、惨めな姿を見せつけるようなものだった。