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魔境夢想華

第2章 転校生《凜視点》

「何なんだ、最近の夢……」
こう毎晩じゃ、身体が参っちまう。朝 からかなり疲労してしまう。
これから 学校だというのに、ほんと参っちゃうよ。


それでも朝から愚痴を零してもしょう がない。
学生服に着替え、俺は一階に降りる。 簡単な洗顔と歯磨きを済ませると、す ぐさま朝食の用意に取り掛かる。



うちは父子家庭だ。母さんは三年前に 心不全で他界し、雑誌編集の仕事をし ている父さんと、数週間前にこの地に越してきた。



「父さん、いい加減に起きないと遅刻 するよ!」
寝起きの悪い父さんを起こすのも、家 事全般をやるのも俺の仕事。


「……んー……っ」
やっと目覚めたらしい。
「早く着替えろよな。もう朝飯出来た からさ」

目を擦りながら、大きな身体がのそり と起き上がる。

「おー、毎回悪いな、凜(リン )」
「悪いと思ったら、自分一人でちゃん と起きてくれよな」
呆れ返りながらも、父さんの部屋にも 朝を吸収しようとカーテンを開けてや る。
「いやー、だって毎日起こしてくれる 目覚し時計があるからさー」
悪戯っぽく笑うこいつが実の父さんか と思うと、ちょっとだけ情けなくな る。
毎日の繰り返しだけど更に疲労感が増 してきて、ちょっとした眩暈を感じな がらも俺はそれ以上何も言わず、キッ チンにと戻っていく。



これが毎朝、変わることのない浅倉家 の朝の日常だった。




「んじゃ、ちゃんと戸締りしてくれよ な」
遅めの出勤である父さんに声を掛けて から、俺は学校に向かう為、玄関へと 向かっていった。
「おう!  お前も気をつけてな」
父さんの声に送られ、俺は学校に登校する。

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